
卒業式は子どもの成長を祝う大切な節目の行事です。
母親として着物で出席したいけれど、「どんな着物を選べばいいの?」「マナー違反にならないか心配」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、卒業式で母親が着物を選ぶ際の基本マナーから、訪問着・色無地・付下げなど着物の種類と格の違い、年代別のおすすめカラー、帯や小物の選び方まで詳しく解説します。
式典にふさわしい上品な装いのポイントを押さえて、晴れの日を素敵な着物姿で迎えましょう。
ここでは、卒業式で母親が着物を選ぶ際の基本マナーについて解説します。
卒業式で母親が着る着物として最も一般的なのは、訪問着、色無地、付下げです。これらは略礼装または準礼装に分類され、式典という改まった場にふさわしい格を備えています。
一方、黒留袖は結婚式など親族が着用する正礼装であり、卒業式には格が高すぎるため不向きです。振袖も未婚女性の第一礼装という扱いなので、母親の立場では適していません。
訪問着・色無地・付下げ・小紋は、それぞれフォーマル度に違いがあります。
| 着物の種類 | 特徴 | フォーマル度 |
| 訪問着 | 絵羽模様で柄が縫い目をまたぐ。華やかで格式もある略礼装。 | 高め(略礼装) |
| 色無地 | 一色で染められ、紋を入れると準礼装に。 | 高め(準礼装) |
| 付下げ | 柄が縫い目をまたがず、上下方向に流れる配置。控えめな印象。 | 高め(訪問着に近い) |
| 小紋 | 普段着にあたる。江戸小紋なら式典で着用可能。 | 低め(カジュアル) |
卒業式で母親が着物を着る場合、学校や地域によっては習慣・しきたりが存在するケースがあるので、事前に確認しておくとよいです。
例えば、着物の柄や帯の種類、羽織やショールの使用可否などに制限がある場合があります。卒業式では周囲との調和を保つことが大切なので、地域の卒業式の習慣を調べたり、卒業生の親御さんから話を聞いたりしておきましょう。
卒業式では、他の保護者や先生方とのバランスを意識することも大切です。例えば、他の保護者がスーツなどの洋装が多い式典であれば、着物姿でも控えめな色柄を選ぶと調和がとれます。変に目立つと場の雰囲気を壊してしまう恐れがあるので、あくまで主役は子どもであることを念頭に置き、派手すぎない上品な装いを心掛けるとよいです。
卒業式は写真を撮る場面が多いため、写真映えを意識した顔まわりが明るく見える色柄や、帯揚げ・帯締めなどの小物の合わせ方を意識するとよいです。
また、式典中は長時間座っているため、着崩れが起こりにくいシンプルな帯結びや、補正を取り入れましょう。写真を撮る頃には、裾が乱れたり帯の位置がずれたりすることもあるので、撮影前に軽く整えると綺麗な着姿を保てます。
ここでは、卒業式の母親にふさわしい着物の種類と格についてお伝えします。
訪問着は、卒業式で最もよく選ばれている着物です。柄が縫い目をまたいで描かれた絵羽模様が特徴で、格式がありながらも華やかさが調整しやすいため、卒業式に適しています。
色柄のバリエーションも豊富で、控えめながらも華やかに装いたい方におすすめです。黒留袖や色留袖に次ぐ準礼装として位置づけられ、年齢や結婚の有無に関係なく着用できます。
色無地は、白地と黒地以外の無地の着物で、卒業式でも着られる格式高い着物です。柄がなくシンプルなため、見た目がすっきりしていて上品な印象を与えられます。
特に、一つ紋や三つ紋が入った色無地は「準礼装」とされ、卒業式のようなセミフォーマルな場にもふさわしい装いです。訪問着よりも控えめなので、落ち着いた印象を求める方に人気です。
付下げは、訪問着の華やかさをやや抑えて仕立てられた着物です。訪問着に比べて控えめな印象ですが、格としてはほぼ同等とされており、卒業式でも着用できます。
柄は縫い目をまたがず、上下方向に流れるように配置されているため、模様がすっきりと見え、やわらかく上品な印象になります。
小紋は、一般的にカジュアルな着物として位置づけられているため、卒業式などの晴れの日には不向きとされています。ただし、江戸小紋、特に三役(鮫、行儀、通し)と呼ばれる礼装向けの柄であれば卒業式で着用できます。
江戸小紋は色無地に見えるほど模様が細かく、大人の粋な装いになるため、上品にまとめたい方におすすめです。柄がとても細かく無地のように見える江戸小紋であれば、格式ある式典にもふさわしい装いとなります。
黒留袖は、既婚女性の第一礼装ですが、卒業式では格式が高すぎて場にそぐわないため避けるべきです。色留袖も一つ紋であれば準礼装となり、式典に着用できますが、あまり一般的ではありません。
卒業式の主役はあくまで子どもであり、親が過度に目立たないことが望ましいので、格式が高すぎる装いは控えるのがマナーとされています。
ここでは、卒業式で好印象を与える母親の着物の色選びについて解説します。
卒業式で母親に人気の色は、ベージュ、グレー、淡いピンクなどの落ち着いた色合いです。ベージュは優しく品のある印象を与え、幅広い年代に似合う万能カラーです。グレーは大人の落ち着きと知性を感じさせる色で、別れと感謝の意味も込められた卒業式に好まれる傾向にあります。淡いピンクは春の季節感を表現でき、肌馴染みもよいため、華やかさを抑えて優しい印象に仕上げられるカラーとして人気です。
子どもの卒業式で母親が選ぶとよい、着物の年代別おすすめカラーは以下の通りです。
| 年齢 | おすすめカラー | 特徴 |
| 40代 | 淡いベージュ、薄紫、柔らかなグリーン | 落ち着きの中にも明るさを取り入れた色 |
| 50代 | グレージュ、水色、薄いピンク | 上品さと華やかさのバランスが取れた色 |
| 60代 | 藍色、薄鼠、薄藤色、落ち着いたワインレッド | 落ち着きや気品を感じさせる色合い |
卒業式で避けた方がよい色は、赤や濃いピンク、オレンジなどの派手な色です。また、喪服を連想させる真っ黒な着物も式典の雰囲気にそぐいません。卒業式で母親が着物を着る際は、主役である子どもより注目を集めることはNGなので、周囲とのバランスを考えて落ち着いた色を選ぶようにしましょう。
帯や小物を選ぶ際は、着物と同系色でまとめると落ち着いた印象になります。例えば、ベージュの着物には白や金糸が入った袋帯、ピンクの着物には淡いクリーム色の帯を選びましょう。
地味になりすぎる場合は、着物と反対色の帯を選んだり、帯揚げや帯締めで差し色を効かせたりすると華やかさをプラスできます。全体の色使いは三色程度に抑え、まとまりを持たせることもポイントです。
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ここでは、母親が卒業式で着る着物に合わせる帯・小物選びについて解説します。
袋帯は、長さ約4m20cm~4m30cmのフォーマルな場に適したサイズ感で、表と裏の生地を縫い付けて袋状にした帯です。名古屋帯は長さ約3m60cmと袋帯より短くカジュアルに着こなせることが特徴で、お太鼓以外の部分が半分の幅になっています。
卒業式では、袋帯を合わせることが一般的です。帯の格や結び方によって雰囲気を調整できるので、式典の雰囲気に合わせて選びましょう。
帯揚げは、帯と同じ色で統一感を出すか、対照色でアクセントを加えるのが基本です。帯締めは帯揚げと調和する色を選びましょう。着物や帯の柄に含まれる色を取り入れると、全体のまとまりが一層よくなります。
卒業式で着物を着る際は、かかとが5〜6cmの高めの草履を選びます。金や銀を基調としたデザイン、芯が重なっている草履は格式が高いので、卒業式の雰囲気に合う華やかな装いになります。
着物に合わせるバッグは小ぶりなサイズが基本です。草履と色を揃えたり、セットで購入したりすることで統一感が生まれます。
フォーマル感を高めるためには、白色で「こはぜ」がついた足袋を選んだり、パールの髪飾りを身に付けたりしましょう。全体の色味がバラバラだとまとまりがなくなるので、着物や帯に合わせて色味を統一し、差し色は控えめにするとよいです。
ここでは、卒業式で母親が着物を着る際の注意点について解説します。
卒業式では長時間の着座に加え、式後の移動や写真撮影など、意外と動く機会が多くあります。動きにくい着物や座りにくい着付けでは疲れが溜まってしまうため、着物選びや着付けの段階から帯の結び方を工夫したり、着心地をあらかじめ確認しておいたりするとよいです。
着物で卒業式に出席する際は、式典の進行やマナーを妨げない装いを心がけましょう。例えば、髪型はダウンスタイルを避け、襟足が見えるようにアップにしたり、派手な髪飾りは控えたりと身だしなみを整えることが大切です。
また、式典中は着席している時間が長いので、座席マナーに気をつけ、子どもや他の保護者の視線を邪魔しないようにするとよいです。
総柄のように模様が多すぎるデザインや、派手な大柄、奇抜な柄は避けましょう。卒業式に出る際は、明るいパステルカラーよりも、ピンクベージュや裾にグレーがあしらわれたデザインなど、落ち着きのある色味が適しています。
ただし、地味すぎても単調な印象になってしまうので、帯揚げ・帯締めで色味を足したり、控えめな光沢の小物を取り入れたりして、華やかさをプラスするとよいです。
着崩れを防ぐコツは、腰ひもや補正具を上手に活用することです。腰ひもは滑りにくい素材を選び、綿やモスリンなど締めやすく緩みにくいものを選びましょう。体型補正にはフェイスタオルを数枚用意し、お腹や腰周りに巻いて体型を整えると、着物がより安定します。
今回は、卒業式で母親が着物を選ぶ際の基本マナーや種類、年代別のおすすめカラー、帯や小物の選び方について解説しました。
卒業式で母親が着物を着る際は、訪問着・色無地・付下げなどの略礼装または準礼装を選ぶことが基本です。色味は派手な色や黒留袖を避け、ベージュ、グレー、淡いピンクなどの落ち着いた色合いにすると、主役である子どもを引き立てられる装いになります。
式典では、長時間の着座や移動があるため、動きやすさと着崩れ防止を意識するとよいです。派手すぎず地味すぎないバランスのよい着物姿で、お子さまの大切な卒業式を心に残る一日にしてください。
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