彩・きもの通信

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彩の歳時記 令和2年6月

2020.05.29

我が宿に雨つゝみせよ さみだれのふりにしことも語りつくさむ

 加藤千蔭【1735~1808】

「外に出られないなら、我家にずっといて、もう古くなってしまった昔話も何も、積もる話を語りつくしましょう。」

加藤千蔭[別名・橘千蔭]は、国学を賀茂真淵に学び、同じ弟子の本居宣長の協力を得『万葉集略解』を著した江戸時代後期の国学者・歌人・書家。 東京国立博物館に木像と肖像画が残る。刻一刻と色が変わる梅雨の空、誰かに会いたい気持ちを抑えつつ、静かな日常をやり過ごす時期が、今は当たり前のように感じられる今年の梅雨。日本人は古来、色々な感情を「和歌」という詩にしたため、その豊かな語彙で日本の国の自然・文化を表現してきました。「雨」も、その一つで「五月雨・翠雨・霧雨時雨」など百以上もあります。雨を表す言葉たちの意味を探ってみるのも一興かも。

 

6月の暦 ― 水無月(みなつき)

<無(な)>は助詞(な)にあたる(の)を意味し、「水の月」という意味。

1日 衣替え 

日本特有の習慣。平安時代に宮中で始まる。現在は、官公庁・企業・学校などで実施。きものは伝統を重んじ、布・仕立て・文様・柄なども衣替え。

「春すぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山」

持統天皇【645~703】

5日 芒種(ぼうしゅ)【二十四節気】

芒(のぎ)<稲や麦など穂が出る穀物>の種を蒔く時期。紫陽花が咲き、梅の実が青から黄色に、蒸し暑くなり、梅雨入りの近さを感じる。

8日 長明忌 

三大随筆[他に枕草子・徒然草]「方丈記」の作者・鴨長明【1155~1216】の忌日。
地震・疫病など多発した苦難時代、「方丈」=「一丈四方の庵」に俗世から離れて住み「自らこれを愛す」とし、そこで「無常」という観念の中、静かに暮らした。
夏目漱石は英訳で、世界に紹介した。時を超えても天災は身近なもで、新しい生活観念が生まれるのかも。

10日 入梅(にゅうばい)【雑節】

芒種から数えて6日目頃。今は天気経過と1週間先の見通しを判断し決められる。

19日 桜桃忌 

太宰の日。太宰治の生誕日。小説家・太宰治【1909~1948】の命日は13日。昭和23年、愛人と入水心中した遺体が玉川上水で発見された日。作品は今も人気が高く「時代の空気に違和感をおぼえる若者の共感」「句読点の多用でブログ的」「巧みな一人称語り」で対人関係の苦手な中高校生の読書感想文に『人間失格』が多いという。三鷹の禅林寺の森鴎外の墓の右向いに墓があり、この日,愛読者による法要が行われる。

21日 夏至(げし)【二十四節気】

一年で一番昼が長い日。

21日 父の日(第3日曜日)

1972年(昭和47年)には当時のニクソン大統領が「6月の第3日曜は父の日」と宣言し、アメリカでは正式な祝日に。

30日 夏越しの祓い(なごしのはらい)

半年間の罪と穢(けがれ)を祓い清める神事。疫病よけの茅の輪くぐりが多くの神社で行われる。一年の半分が過ぎ、疫病に見舞われた今年の日本の状況に鑑み、多くの参拝者が訪れる。小豆の赤い色が邪気を払うとされる和菓子「水無月」を食す。

 

6月の歌 「雨」

詞 千家和也【1946~2019】 曲 浜圭介【1946.~】

歌唱の三善英史【1954~】は、第14回日本レコード大賞・新人賞など受賞。なかなか来ない恋人を待ちながら、同じように誰かを待ち続ける人を見ている光景。携帯もない時代、人を待つことには一種の歓びがあり、ノスタルジーを感じる歌詞。発売の1972年[昭和47年]頃は、フォーク全盛の時期と並行して「新御三家」の西城秀樹・郷ひろみ・野口五郎、「新三人娘」の天地真理・南沙織・小柳ルミ子が活躍し、アイドルたちが人気を博したのは50年近く前の事。

雨にぬれながら 
たたずむ人がいる
傘の花が咲く 
土曜の昼さがり
約束した時間だけが 体をすりぬける
道行く人は誰一人も 見向きもしない
恋はいつの日も 
捧げるものだから
じっと耐えるのが 
つとめと信じてる

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