彩・きもの通信

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彩の歳時記 令和3年3月

2021.03.01

うらうらに 照れる春日に ひばり上がり 心悲しも ひとりし思えば

大伴家持【718~785】

 

 上句でうららかな光の中に舞い上がる雲雀を、下句で自分の孤独と向き合う「春愁」を対称的に詠んだ万葉集の中で教科書にも掲載された名歌。
 家持は筑紫歌壇で活躍した万葉初期歌人「大伴旅人」の子で万葉歌人の代表。家持の歌は『万葉集』の全歌(4516首)のうち(473首)を占め、万葉歌人中最多。
 情報が溢れ、言葉が氾濫する中、省略言葉や雑な表現が目立つ現代、春の心象情景を表す優しく丁寧な言葉を、日々の暮らしに採り入れ、豊かな感性を培ってゆきたいもの。

3月の暦 弥生(やよい)

「弥」は「ますます・いよいよ」、「生」は草木「生」きる=「芽吹く」。

3日 雛祭 【上巳の節供・桃の節供】

五節供の一つ。古来中国は上巳の日に川で身を清め不浄を祓う習慣があり、平安時代に伝来、後に紙で作った小さな人形(形代)に穢(けがれ)を移し川や海に流す「流し雛=後の雛人形」になり、現在でも各地に残る。

5日 啓蟄(けいちつ)【二十四節気】

蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく) 冬眠の虫たちが出てき始める頃。

8日 国際女性デー《ミモザの日》 

国際デー。 1904(明治38)年、米の女性労働者が参政権を求め集会を開いた日。 HAPPY WOMAN FESTA 2021』の開催五周年を記念して、コロナで浮き彫りとなった「男女の無意識の偏見」が題材の短編映画公開。
イタリアでは男性が女性に感謝の気持ちを込め「ミモザ・花言葉は感謝」を贈る日。

10日 東京大空襲記念日 

1945(昭和20)年 アメリカ軍による焼夷弾爆撃があり死者約十万、焼失家屋約二十七万という、第二次大戦で最大の被害を出した。これで肉親と死別した海老名香葉子氏(故林家三平の夫人)建立の「時忘れじの塔」が上野公園に。

11日 東日本大震災の日

2011(平成23)年に発生した(Mw)9.0の観測史上最大の地震で東北地方太平洋沖地震とそれによる津波で太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらし、死者行方不明者は一万九千人余、三十八万戸余の家屋が全壊・半壊。福島原発のメルトダウンが発生した。早十年に「歳月不待人」の思いに至る三月。

12日 お水取り

奈良・東大寺二月堂の千二百年余り不断の春を告げる年中行事。正確には「修二会(しゅにえ)」。夜、籠松明(たいまつ)が本堂回廊を駆け抜け、その火の粉を浴び除災を願う。今年は奈良公園の春日野園地にて大型ビジョンで河瀨直美監修のライブビューが配信される。

20日 春分(しゅんぶん)【二十四節気】

国民の祝日。前後七日間が彼岸。花冷えや寒の戻りも。

毎年よ、彼岸の入りに寒いのは

子規の母の句     

26日 楽聖忌 

ドイツの作曲家ベートーベン【1770~1825】の忌日。聴覚を失いながらも、数々の交響曲などを生み出し、溢れる創意で音楽界への革命をもたらした。古典派音楽の集大成かつロマン派音楽の先駆けとされた。『英雄』『運命』『交響曲第九番』。

 

3月の歌 春の歌

詞 野口雨情【1882~1945】
曲 草野信

「春愁」とは無縁だった子どもの頃を懐かしく感じさせる歌。大正11年の雑誌『少女号』に掲載。野口は茨城出身。北原白秋、西條八十とともに童謡界の三大詩人と謳われた。『シャボン玉』『十五夜お月さん』『七つの子』『あの町この町』など。井之頭公園内に『七つの子』などの歌碑がある。
草野は長野市出身。東京音楽学校(芸大)に学び、童謡の作曲を手がけ、鈴木三重吉主宰の『赤い鳥』に発表。代表作には『どこかで春』『ゆりかごの歌』 『汽車ポッポ』『緑のそよ風』など。

桜の花の 咲く頃は
うらら うららと 日はうらら
 ガラスの窓さえ みなうらら
 学校の庭さえ みなうらら
河原で雲雀の 鳴く頃は
うらら うららと 日はうらら
乳牛舎(ちちや)の牛さえみなうらら
鶏舎(とりや)の鶏さえ みなうらら

  三番 略


彩の歳時記 2021年2月

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