彩・きもの通信

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彩の歳時記 令和5年8月

2023.08.04

我が宿のなでしこの花盛りなり 手折り(たを)て一目 見せむ子もがも

大友家持【718~785】

万葉集の中で一番多く詠まれる花、撫子、「撫でし子」の語意がしばしば子どもや女性に喩えられる秋の景物。万葉集は七世紀末から八世紀末編纂の現存するわが国最古の歌集。『枕草子』に「草の花はなでしこ、唐のはさらなり やまともめでたし」。また異称の「常夏」は『源氏物語』の第五巻の名称で色とりどりのトコナツを植えていた様子が描かれています。「なでしこの とこなつかしき 色を見ば もとの垣根を人や尋ねむ」は、光源氏と玉鬘(たまかづら)が詠んだ和歌。今も行く先々で目にする撫子の開花期間は長く春から初秋まで目を楽しませくれます。千年以上前の古人に心を寄せる余裕の時を持ちたいものです。



月の暦

葉月(はづき) 葉落ち月・穂張り月:(はつ)来月(きつき)(ふみづき) 
七夕の短冊に文字を書き、書道の上達を願ったことに由来。

「朝山や葉月の月のきえのこり 青嵐」

1日 八朔(はっさく)

八月(つい)(たち) 早稲(わせ)が実る頃で「田の実の節句」といい、農家では頼みにした人に贈物をする習俗があり武家や公家もそれに倣った。中元の始まりとも。また、1590年、徳川家康が江戸城入城の日で、幕府にとって正月に次ぐ祝日で大名や旗本が正装で登城し、将軍に祝辞を述べた。


東北四大祭

旧盆の帰省の時期でもあり、多く観光客で賑わいを見せる。

青森ねぶた(2~7日)「ラッセラー」の掛け声と共に巨大なねぶたが市内を練り歩く。

秋田竿燈3~6日)稲穂見立ての提灯をつるした12mの竿を肩や腰、額に乗せて豊作を願う。

山形花笠(5~7日)花笠太鼓の音色と華やかな山車・艶やかな衣装と花笠の群舞が見所。

仙台七夕(6~8日)吹流しや仕掛け物などを飾りつけ、その華麗さを競い合う。


慰霊・鎮魂の月 

原爆忌・終戦記念日・大文字焼・精霊流し 盂蘭盆会

6日 広島原爆忌

世界初のウラン型原子爆弾(Little Boy)の投下による被爆者は25万人(死者14万人)といわれる。今年は核兵器廃絶への要望書を被爆者団体が提出する。


8日 立秋(りっしゅう)二十四節気】

二つの原爆忌を挟む秋立つ日。

秋立つや 皆在ることに 泪して

永田耕衣

9日 長崎原爆忌

黒澤明【1910~1998】監督の『八月の狂詩曲』1991年制作は原爆体験をした長崎の祖母と孫たちのひと夏の交流を描く映画で当時の状況を映し出した反核映画。


10日 西鶴忌(しゅうじき)

大阪の浮世草子・人形浄瑠璃作者、俳諧師、井原西鶴【1642 -1693】の忌日。

近世文学最盛の元禄期に活躍した「西鶴 ・近松門左衛門・芭蕉」は小説、浄瑠璃俳諧 の分野を代表する三大文豪。『好色一代男』『好色五人女』など。町人が直面した経済社会の明暗や運命を描いた『‎日本永代蔵 ·世間胸算用』は広範な読者層を獲得。実際の駆け落ち事件を「お夏・清十郎」として浮世草子『姿姫路清十郎物語』書き、人気を集めた。

          

11日 山の日

2016年からの祝日。当初の12日が日航機墜落事故の日の為この日に。


15日 終戦の日

政府発表は戦死者は約212万人、空襲による死者は約24万人。「全国戦没者追悼式」が天皇皇后両陛下臨席の武道館で催行される。


月遅れ盆【盂蘭盆会】

盆の月 亡者の帰る 鉦(かね)の音 正岡子規

16日 大文字焼「五山送り火」 

精霊を送る伝統行事。東山に大の字が浮かび 松ケ崎に妙・法、西賀茂に船形、大北山に左大文字、嵯峨に鳥居形。



23日 処暑【二十四節気】

暑さも収まる頃というが。


8月の歌 追伸』 

詞・曲 さだまさし【1952~】 1974年

手紙からメール、メールからLINEと伝達手段の変化で若い世代では「追伸」という言葉も使われない傾向に。手紙では書き忘れた文を本文に挿入でき書き直さず.によく使われたが、今は話題変更か一呼吸置くためのものに。英語 ではpostscriptの頭文字からP.S。

撫子の花が咲きました
芙蓉の花は枯れたけど
あなたがとても無口になった秋に
こわくて私聞けませんでした
あなたの指の白い包帯
上手に巻いてくれたのは誰でしょう
風邪に頼んでも無駄ですか
振り返るのは嫌いですか
どこにもある様な事ですが
私 髪を切りました 
 後略


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