彩・きもの通信

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彩の歳時記 令和7年7月

2025.07.01

たなばたの 逢ふ瀬は雲のよそに見て 別れのにはに 露ぞおきそふ

                       ―光源氏

七夕の逢瀬は雲の向こうの別世界のことと思って、ひとりのわたしは別れの露をおくこの庭に、涙の露を添えています」


光源氏が五十一歳の時、最愛の女性、紫の上を亡くした翌年の七夕の夜、一緒に牽牛と織女の逢瀬を見たことを想いつつ、深夜に庭木の露を自分の涙に準えて詠んだ歌。

百年程前の昭和の初め頃は、まだ季節の行事が日常に根付いており、戦後も暫くは身近であった年中行事・七夕は、家庭や街頭で夏の雰囲気を感じさせてくれたもの。

七夕五節句の一つで平安時代の大切な宮廷行事、現代まで受け継がれ、軒先に竹を立て、願いを書いた短冊を飾った記憶を持つ人も多いでしょう。季節感が希薄な昨今日々の暮らしに年中行事を取り入れ、生活に潤いを持たせたいものです。

月の暦

文月(ふづき)文月(ふみづき) 短冊に歌や字を書き上達を祈った七夕に因み文披(ふみひらき)(づき)が転じた。


1日 半夏生(はんげしょう)【雑節】

夏至 から十一日目。梅雨末期、半夏(烏柄杓)という毒草が生え天気不順な頃、蛸の足のように苗が土に根を張るよう、タコを食べる習慣もある。

1日 海開き・山開き

山開きは山岳信仰が起源、海開きはそれにならって行われるように。



6~8日 入谷朝顔市

大田南畝(おおたなんぼ)の狂歌「恐れ入りやの鬼子母神」で有名な入谷鬼子母神周辺で開催。当初は御徒町付近の武士が栽培した朝顔が、入谷の植木屋で精力的に育てられたのが「朝顔市」の始まりで、現在の「朝顔まつり」に。 大正2年に1度途絶えたが昭和23年に復活、百軒程の店が軒を連ねる。


7日 七夕(たなばた) 

五節句【 3月3日 の桃の節句 · 5月5日の菖蒲の節句 · 7月7日の笹の節句七夕9月9日の菊の節句・重陽】の一つ。中国神話に登場する「牛郎と織女の逢瀬」を祝う祭で中国旧暦7月7日にロマンチックな愛を祝うバレンタインに相当する伝統的な行事。日本では棚機で着物を織り、この日の夕方に神様を迎える「棚機津女」という行事が起源とも。。


7日 小暑(しょうしょ)【二十四節気】 

次の大暑までが、一番暑い期間。蓮が咲き始める。



10日 四万六千日

寺社の縁日、この日の参詣は46000日分のご利益や功徳があるとされ、浅草寺・護国寺が有名。⦅ほおずき市⦆9・10日 芝の愛宕神社・浅草寺の夏の風物詩。


無月(なつき)(うづき)

13~16日 盆・盂蘭盆会  

祖先を供養する行事。 一月遅れが主流で7月は首都圏中心の一部。


19日 土用丑の日

鰻が密接に結びついたのは、平賀源内が鰻屋の為に書いた客寄せのコピー。




20日 海の日(国民の祝日) 第三月曜日

7月20日の海の記念日が祝日化したもの。




22日 大暑【二十四節気】

夏の暑さが極まる季節 熱中症予防勧告が毎日のように。



24日  河童忌

小説家芥川龍之介【1892~1927】の忌日。河童の絵を好んだ事に因る東京帝大在学中から創作を始め、短編「鼻」夏目漱石に激賞され、「羅生門」「芋粥」「藪の中」「杜子春」などを次々と発表、大正文壇の寵児に。名前を冠する芥川賞は雑誌などに発表された純文学短編の新進作家に贈られる。養子として育った両国の実家が洪水に遭い、巣鴨の芥川家の菩提寺に近い田端に転居、田端駅前の「文士村記念館」には居宅の復元模型などもある。没後百年の2027年「芥川龍之介記念館旧居跡に開館予定。


7月の歌  たなばたさま


1941年(昭和16年)文部省「うたのほん 下」

作曲の下總皖一【1898-1962】は「かくれんぼ」「ゆうやけこやけ」や小・中・高校の校歌 を作曲、曲数は1000曲以上に上る。門下に團伊玖磨、佐藤眞、芥川也寸志等がいる。作詞の権藤はなよ【1899-1961】の詞は短くやさしいのに「七夕」という言葉はなく「さらさら」「きらきら」と韻を踏み、一番の終わり「砂子」は二番の頭「五色」のゴ音が重なり、二番を自然に歌い出せる巧みさや「金銀砂子」星空を金箔・銀箔の粉末をまき散らした日本の伝統装飾技法(蒔絵、日本画等)に例えている。五色は中国の五行説 「木(緑)火(赤)土(黄)金(白・水(黒)の自然哲学の思想で日本の慣習や年中行事に採り入れられている。

1.ささの葉さらさら
のきばにゆれる
お星さまきらきら
きんぎん砂子(すなご)


2.五しきのたんざく
わたしがかいた
お星さまきらきら
空からみてる


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