※この記事は、月刊Kacce2022年4月号〜6月号に掲載した記事を再編集したものです。
彩きもの学院では、着付けのテクニックを教わるだけでなく、生徒や先生方とのつながりが広がり、日本の伝統文化に触れる機会が増え、新しい世界に通じる扉がどんどん開いていくのだとか。着物の魅力について、「彩きもの学院 池袋校」の校長を務める春山一恵さんにたっぷりとお話を伺いました。
目次
日本の伝統美を楽しもう!
私がこの学院に入門したのは43才のとき。きっかけは、母の着物があってもったいないと思ったから(笑)。今ではすっかり、きものがライフワークになっていますけどね。
きものは下着から順に1つずつきちんと身に付けていくと、自然に背筋がシャンと伸びていって気持ちがいいんですよ。違う自分になれるような感じがするんです。
私は洋服のおしゃれも大好きですが、きものの魅力は、自分なりの演出を楽しめることじゃないでしょうか。「このきものにはどんな帯と帯締めを合わせようか」と考えたり、小物でアレンジを加えてみたり…。洋服とはまた違った“和”のファッションが楽しめます。ちなみに私は、シックなモノトーンのコーディネートが気に入っています。
きものを着ていて一番うれしいのは、この年齢になっても声をかけられて褒められる機会が多いこと! 生徒さんが「きものステキですねって言われました」と喜んでいると、私までうれしくなっちゃいますね。
きものや着付けの勉強を通して、染めや織りの職人さんの世界を知ることができたり、歌舞伎や能、お茶などを体験したり。次世代に伝えていきたい日本の素晴らしい伝統文化に触れることができました。
財産は「人との出会い」
結婚後、子育てや家事に専念していましたが、下の子が中学生になったのをきっかけに学院に通い始めました。初めは着付師になれればと考えていましたが、素晴らしい先生や仲間たちと出会い、どんどん楽しくなって…。そのうち、「着付師には後からでもなれるから講師をやってみない」と背中を押され、指導者の道へ。私の“本気度”が家族にも伝わり、主人も協力してくれるようになりました。
校長になってから、60才の時に主人が他界。私も63才でがんを患い、もう復帰できないんじゃないかと落ち込んだ時期もありましたが、仲間に励まされ、スタッフに支えられ、こうして仕事を続けることができています。1人で愛犬と暮らす今、仲間や居場所があるというのは本当に幸せなこと。だから生徒さんにも、技術を学ぶだけでなく、きものを通して良い仲間をつくってほしいと思っています。
各校の校長で毎月開催している勉強会では、きものの新しいアレンジや、生徒たちと出かける場所などアイデアを出し合っているんですよ。常に新しいことに挑戦し、ワクワクすることを生徒さんに伝えながら、生涯勉強していくつもりでこれからも楽しんでいきたいです。
「きものの楽しさ」を伝えたい
私たちが授業で大切にしているのは、「きものって楽しい」と感じてもらうこと。きものを通していつもと違う自分を見つけたり、生徒さん同士でおしゃべりしながら着付けをし合ったり…。毎回、新しいことを1つでも習得して「今日も来てよかった!」と思ってもらえるように工夫しています。私、「北風と太陽」のお話が好きなんです。暖かいと自然に心が開くでしょ。だから、生徒さんの太陽でありたいと思い、「お稽古は楽しく」をモットーにしているんです。
ここは“きものが好き”という思いでつながっている場所なので、授業のあとにお茶をしたり、食事に行ったりと、年齢に関係なく仲間ができるのも魅力のひとつ。みんなで切磋琢磨して腕を上げ、ご家族の成人式や七五三できものを着せてあげられるようになり喜ぶ姿を見ると、指導者冥利に尽きますね。
きものをきれいに着るために大事なことは何だと思いますか? 実は、下着をきちっと整えることなんです。着方次第で見た目が全く変わりますから。そういった基本の大切さは、少人数でていねいに学ぶことで体感できるんです。新たなチャレンジをしてみたい方、私たちと一緒にきものの世界を楽しんでみませんか?
春山 一恵(はるやま・かずえ)
彩きもの学院池袋校校長。
関連項目
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