彩・きもの通信

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彩の歳時記 令和3年6月

2021.06.01

ほととぎす 鳴きつる方を眺むれば ただ有明の月残れる

— ほととぎすが鳴いたので、その方角を見ると姿は既に無く、ただ有明の月が残っているだけでした—

「ほととぎす」は夏を告げる鳥。明け方(有明)に鳴く夏の風物詩で当時の貴族らは夜通し待ちわび、楽しんだようです。呼称も「杜鵑、不如帰、時鳥、子規、田鵑」もあり、『万葉集』『古今集』『新古今和歌集』に200首余り収納。子規は喀血時に「鳴いて血を吐く」ホトトギスと自分を重ね合わせ、俳号に。徳富蘆花【1868~1932】の小説『不如帰』の中「あああ、人間はなぜ死ぬのでしょう! 生きたいわ! 千年も万年も生きたいわ!」というヒロイン浪子の絶唱は日本近代文学を代表する名セリフ。蘆花没後、旧宅は整備され蘆花恒春園に。京王線「蘆花公園駅」は1937年「上高井戸」から改名、今も武蔵野の自然が残る憩いの空間。

目には青葉山ほととぎす初鰹  山口素堂【1642~1716】

6月の暦 水無月(みなつき)

無(な)は連体助詞(な)にあたるので「水の月」という意味。

1日 衣替え

平安から続く日本特有の習慣。現在、官公庁・企業・私立学校などで行っているが緩やか。「きもの」では、伝統を重んじ「布・仕立て・文様・柄」など替え、袷から単衣に。

   谺(こだま)して 山ほととぎす ほしいまま    杉田久女【1890~1946】

5日 芒種(ぼうしゅ) 【二十四節気】

 芒(稲や麦など穂)が出る穀物の種を蒔く時期。紫陽花が咲き、梅の実が青から黄色に、蒸し暑く、梅雨入りの近さを感じる。

6日 お稽古の日 

世阿弥(ぜあみ)の『風姿花伝(ふうしかでん)』に習い事を始めるには七歳(満六歳)とあり「六歳の六月六日」という言い回しは「江戸歌舞伎」の台詞が慣習化したと言われる。

8日 長明忌

三大随筆(他 枕草子・徒然草)の一つ「方丈記」の鴨長明【1155~1216】の忌日。自らの芸術的感性を『無常』という境地に置き『方丈記』の格調高い文章に纏め上げた。歌人・琴や琵琶の名手で、漱石はこれを英訳し世界に紹介。今の時代も多くの人々に影響与え続けている。

10日 時の記念日

1920年制定。日本書紀に671年6月10日に漏刻(ろうこく)という水時計を台に置き、鐘や太鼓で人々に時刻を知らせたとある。

11日 入梅【雑節】

暦上での梅雨入り。「夏の始まり」。

19日 桜桃忌(おうとうき) 

小説家・太宰治【1909~1948】の忌日。 昭和23年6月13日、東京の玉川上水に入水心中し、遺体が発見された19日が太宰の誕生日でもあったことからこの日に。三鷹市禅林寺で供養が行われる。昭和初期、一番の人気作家。享年39歳。青森県五所川原市の実家、斜陽館は重要文化財。代表作に『人間失格』『斜陽』『桜桃』など。

20日 父の日〔第三日曜日〕

   父の日や 歌声喫茶の 狭きドア

21日 夏至(げし)【二十四節気】

一年で昼間が最も長くなる日。

30日 夏越し(なごし)の祓え(はらえ)

半年間の穢(けがれ)を祓い清める神事で疫病よけの「茅の輪くぐり」が行われる。北野天満宮の茅の輪は京都最大。

6月の歌 チェリー

詞・曲・・・草野正宗【1967年~】

ロックバンド「スピッツ」の楽曲。1996年4月発売。ヒット曲「ロビンソン」とほぼ同数の162万枚を超えるミリオンセラー。弱々しくて、星ばっかり見ている少年のようなムードがさりげなく薫る楽曲。草野本人いわく「何かから抜け出し早く出発したい」というイメージ。2020年にNTT東日本のテレビCM。サビの「愛してる」と「ICT(情報通信技術)「ICT(アイシテ)る?」がキャッチフレーズに。

君を忘れない 
曲がりくねった道を行く
産まれたての太陽と 夢を渡る黄色い砂
二度と戻れない 
くすぐり合って転げた日
きっと想像した以上に 
騒がしい未来が僕を待ってる
「愛してる」の響きだけで 
強くなれる気がしたよ
ささやかな喜びを 
つぶれるほど抱きしめて


彩の歳時記 2021年5月

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