彩・きもの通信

知識を深める

きものの文様➅(最終回)
—桜・儚さと刹那的な美しさ

2022.03.25

敷島の大和心を人問はば朝日に匂う山桜花
(日本人の心とは何かときかれたら、朝日に輝く山桜の花に感じる心と答えよう)

江戸時代の国学者、本居宣長の歌です。桜の花のあでやかさ、一度に散る濃い刹那的な美しさや儚さは、繊細な美意識をもつ日本人の心を魅了し続けています。

枝垂れ桜文様の訪問着
桜文様の帯
桜文様の帯
桜文様の訪問着(右上)
小桜文様の小紋(右下)

(※画像はすべて、彩きもの学院私物)


日本人が桜に思いを寄せるようになったのは平安時代からで、それ以前は花といえば白梅をさしていました。万葉集でも、多く詠まれているのは桜ではなく梅の花です。桜の人気が高まったのは、仁明天皇が御所の庭に奈良の吉野の山桜を植えたことが始まりといわれていて、桜は瞬く間に平安貴族の心を奪ってしまいます。開花を待ちわび、華やかに咲き誇る姿に心を高揚させ、散りゆく花びらに美しさと儚さを感じる日本人の心の機微は、今も昔も変わらないようです。


季節に合わせた装いは、きものの醍醐味ですが、桜は写実的に描かれたもの以外は、季節を問わず一年中着ることができます。桜は稲の神が宿る木といわれており、桜文様は吉祥文様であり、国花ともいえる特別な花だからです。また、一説には、花びらが散っていなる様を「敷き桜」と呼び、「四季」に通じることから通年着用できる文様になったともいわれています。


室町時代以降には八重桜、桃山時代以降には枝垂れ桜を文様化し、江戸時代には「桜楓」 「桜山」「桜川」、そして花びら1枚1枚までを主役に「小桜」「桜吹雪」などと多彩に表現されていきます。
どんな時代にあっても、桜は毎年変わらずに咲き、春の訪れを告げてくれます。満開の桜に出会いの喜びを、葉桜に名付けようのない感情を、散りゆく桜に別れの切なさを重ねて……。今年の桜は、皆さんにとって、どんな桜になるでしょうか。



(写真・文)三浦由貴(みうら・ゆき)

彩きもの学院新宿校校長。自身も生徒として彩きもの学院で学び、 講師の資格を取得。各校で講師として経験を積み、2015年に校長職に就く。2013年、きもの文化検定1級取得。

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