彩・きもの通信

知識を深める

彩の歳時記 令和4年9月

2022.09.01

秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花



萩の花 尾花葛花(おばなくずばな)なでしこの花 おみなえし また藤袴 朝顔の花

山上憶良やまのうえのおくら【660頃~733頃】


作者の山上憶良(やまのうえのおくら)【660頃~733頃】は天智・天武両天皇の侍医・百済人・憶仁の子で百済の滅亡時、父と共に渡来、近江国甲賀郡山に住み、山上氏を称したとの説もある万葉集初期の歌人。柿本人麻呂・大伴旅人らと共に多くの歌を残し、遣唐使としても活躍。《万葉集》に詠まれた植物を『万葉植物』といい,約150余種の記載中、約50種が有名。千葉県市川にある万葉植物園「真間の手児奈(てこな)」という多くの男性に慕われつつも、だれに寄り添うこともなく、真間の入り江に身を投げた美女伝説の所縁の地で万葉植物が 観賞できる日本庭園。千五百年前から命を繋ぐ草花を観つつ秋の彩りを感じてみたいものです。

月の暦

長月(ながつき)  ()長月(ながつき)・長雨の略。


長月の 空色袷 きたりけり 

          ― 一茶

1日 防災の日

1923年(大正12年)のM7.9関東大震災(死者・行方不明者20万人以上、被災家屋60万戸)を教訓として昭和1960年に制定。2011年3月の東日本大震災は88年後の事。


1日 二百十日【雑節】 

嵐が多く襲来する時期。夏目漱石の小説の題名。1899年9月1日、二百十日に友人と阿蘇に登山を試みたが嵐に遭い断念した経験を会話体形式で書いた。

8日 白露(はくろ)【二十四節気】

陽気と陰気が入れ替わり、草や地際に朝露ができ、朝もやの中で朝露が白く輝く。

白露に 阿吽の旭 さしにけり

     ― 川端茅舍【1897-1941】

9日 重陽(ちょうよう)の節供

五節句の一つ。縁起の良い奇数「の数」の重なる日。長寿の象徴。菊にちなみ菊の節句。菊を鑑賞しながら「菊酒」を飲むと長寿になるといわれる。

10日 十五夜

旧暦の8月15日で「十五夜」「中秋の名月」といい、秋の真ん中に出る満月の日、団子や芒(すすき)里芋などを供える芋名月。中国伝来の風習。

名月や池をめぐりて 夜もすがら

          ― 芭蕉



13日 乃木大将の日

乃木坂駅にある乃木神社乃木(のぎ)(まれ)(すけ)大将【1849~1912】の旧宅。

明治天皇の大喪の日に夫人とも殉死し、自宅の地に建立された神社に祭られた。日露戦争の指揮や明治天皇を慕い、殉死したことで国際的に著名。天皇より 第十代学習院長に任じられ、昭和天皇の教育係も務め、当時の民衆に愛された。



19日 敬老の日

1951年に15日が「としよりの日」に制定。1963年「老人の日」に1967年に「敬老の日」、2003年から第3月曜日に。平均寿命は男性81.47歳 、女性87.57歳。


19日 子規忌

俳句、短歌、新体詩小説、評論、随筆などで近代文学に多大な影響を与えた明治を代表する文学者・正岡子規【1867~1902】の忌日。没後120年。 愛媛県松山市生まれ。

俳誌「ホトトギス」を創刊、夏目漱石の『吾輩は猫である』を掲載。「ホトトギス」は高浜虚子によって明治期には総合文芸誌、大正・昭和初期には保守俳壇の最有力誌として隆盛を誇った。 現在の主宰は高浜虚子の曽孫の稲畑廣太郎。晩年を過ごした台東区根岸の子規庵は現存。



柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺  

名月の こよひに死ぬる 秋の蚊か


23日 秋分の日【二十四節気】

秋彼岸(十七日~二十五日)中日彼岸」とは

現世と来世の境を川に例え、現世を此岸(しがん)来世を「彼岸」と呼ぶ。


月の歌 『月がとっても青いから

詞 清水みのる【1903~1979】 曲 陸奥明

歌唱の菅原都々子【1927~】は青森の作曲家・陸奥明【1895~1971年】の長女。古賀政男に認められ養女に、10歳の時、歌手デビュー、戦後『憧れは馬車に乗って』などがヒット、テイチクレコードの黄金時代を築く。昭和30年(1955)約百万枚売り上げ現在なら数百万枚以上の大ヒット曲「月がとっても青いから……」は流行語になり、当時の恋人同士が「月がとっても青いから、遠回りして帰ろう」などと使ったとか。菅原は第1回紅白歌合戦のトップバッターで、いまも95歳で現役の歌手として活動している。

月がとっても青いから
 遠まわりして帰ろう
あの鈴懸の並木路(なみきじ)は
想い出の小径(こみち)よ
腕をやさしく組み合って
二人っきりでサ帰ろう
   
二・三番  略



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