
子どもの成長を祝う大切な七五三。
母親も着物を着ることで、家族の特別な日をより華やかに彩ることができます。
しかし、着物選びやコーディネートのコツが分からず、着用をためらっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、母親の着物選びの基本マナーや七五三にふさわしい着物の種類、色柄や帯の選び方、写真映えのコツ、レンタルと購入の違いなど、押さえておきたいポイントについて詳しく解説します。
七五三で母親が着物を選ぶ時は、基本マナーを押さえておくと安心です。以下では、母親の着物選びにおける格式や色柄、コーディネートの基本マナーについて解説します。
七五三は子どもの成長を祝う大切な行事であり、何よりも子どもが主役であることを忘れてはいけません。そのため、母親の服装は子どもを引き立てる脇役としての役割を果たすことが大切です。着物を選ぶ際は、子どもの晴れ着に合わせて格を調整しながら、写真に残る思い出作りを心がけましょう。
子どもより控えめな色や柄の着物を選ぶ理由は、主役である子どもを際立たせるためです。母親の着物が華やかすぎると、子どもの晴れ着が目立ちにくくなり、写真撮影の際も視線が分散してしまいます。薄い色合いや上品で落ち着いた柄を選ぶことで、子どもの美しさを自然に引き立て、親子でバランスのとれた装いになります。
正礼装と略礼装の違いは、格式の高さと着用場面です。正礼装は冠婚葬祭などの格式高い儀式で着用する最上位の着物です。黒留袖、色留袖、振袖、黒喪服が該当し、必ず五つ紋が入ります。
一方、略礼装は格式張らない結婚式やパーティーに適した着物で、江戸小紋、付け下げ、小紋などが該当し、紋は一つ紋または無紋です。正礼装は主役や主催者側が着用し、略礼装はゲストとして参列する際に適しています。
七五三の主役はあくまで子どもです。子どもより格上の服装は避けるのがマナーとされているため、七五三にふさわしい着物として一般的に選ばれるのは略礼装です。
着物と洋装のどちらを選ぶかは、子どもの衣装に合わせると良いです。子どもの衣装が着物の場合、母親も着物にすることで統一感が生まれます。一方、洋装の場合は、着物だと主役より目立つ可能性があるため統一すると良いでしょう。どちらを選ぶ場合も、主役の装いが霞まないように注意を払うことが大切です。
以下では、七五三にふさわしい母親の着物の種類について解説します。
訪問着は黒留袖や色留袖に次ぐ準礼装の着物です。七五三で母親が着る着物として人気が高く、年齢や結婚の有無に関係なく着用できます。色柄ともに豊富で、明るい色調で薄い色合いのものが多く、フォーマルシーンで選ばれています。
色無地は、白地と黒地以外の無地の着物です。フォーマルなシーンで着用する格式高い着物で、柄がなくシンプルなため、主役の子どもを引き立てる装いとしてピッタリです。見た目がすっきりしていて上品な印象を与えられるので、七五三や入卒園式など特別な家族行事に選ばれています。
付け下げは、訪問着の華やかさを抑えた着物を作るために生まれた着物です。落ち着いた雰囲気に仕上げたい場合におすすめで、七五三でも着用できます。
小紋は、一般的にカジュアルな着物として位置づけられているため、七五三などの晴れの日には不向きとされています。しかし例外として、江戸小紋、特に三役(鮫、行儀、通し)と呼ばれる礼装向けの柄であれば七五三で着用できます。江戸小紋は色無地に見えるほど模様が細かく、大人の粋な装いになるため、上品にまとめたい方におすすめです。
七五三では、主役である子どもの格を一番高く保ち、母親の着物は子どもより控えめにすると良いです。家族間で格を揃えることも大切で、母親と父親の装いを同格にすると統一感が生まれます。また、着物に紋を入れると格が上がるため、必要以上に格式が高くならないよう配慮することが大切です。
ここでは、母親の着物の色選びのコツについてお伝えします。
七五三で母親が着る着物として人気が高い色は、桃色、薄い黄色、水色、薄緑色です。中でも控えめな桃色は、子どもを引き立てながらも華やかさを演出できるため、多くの母親に選ばれています。白系やベージュなどの落ち着いた色も人気で、どの年代にも似合う万能カラーとして重宝されています。
明るい色と落ち着いた色は、場面や演出したい雰囲気に合わせて使い分けましょう。
たとえば、明るい色の着物は若々しく華やかな印象を与えるため、子どもと一緒に写真を撮りたい際におすすめです。一方、落ち着いた色は大人の女性らしい品格を演出でき、母親らしい落ち着きや上品さを表現したいときにぴったりです。
子どもの着物との色合わせでは、完全に同じ色は避け、同系色でも子どもより薄い、または落ち着いた色を選ぶと良いです。子どもの晴れ着の補色を選ぶこともおすすめで、色相環※の反対側にある色にすると全体のバランスが良くなります。
また、男の子の着物は黒や紺などの濃い色が多いため、母親の着物を深緑や赤など印象の強い色にしておかないと、写真撮影時に母親だけがぼんやりしてしまう可能性があります。
※色相環とは、色の種類(色相)を円形に並べて、色同士の関係を分かりやすく示した図のこと
世代別に似合う色やコーディネートのポイントを押さえることで、母親らしい品格を保ちながら七五三の装いを楽しめます。
世代 | おすすめカラー | 特徴・ポイント |
20代 | ペールピンク、桜色 ミントグリーン 薄水色 薄藤色 | 明度・彩度が高く華やかなカラー 帯締めや帯揚げなど小物で鮮やかなアクセントをプラス |
30代 | 薄藤色、薄紫 ベージュ 浅葱色 モーブピンク(くすみピンク) | やや落ち着いたカラー 大人の女性らしさと華やかさを両立した上品な柄がおすすめ |
40代以降 | 紺色、藍色 銀鼠色、薄鼠 深緑 古代紫、ワインレッド | シックで落ち着いたカラー 子どもを引き立てつつ大人の粋な装いを楽しめる |
黒や濃紺などのシックな色を選ぶ場合は、お祝いの席である七五三にふさわしい華やかさを添えることが大切です。たとえば、落ち着いた色の着物には、金糸や銀糸をあしらった袋帯を合わせると、地味になりすぎず上品で格調高い印象になります。アクセントとして帯揚げや帯締めに明るい色を取り入れたり、華やかな柄の着物を選んだりすると、華やかさも演出できるのでおすすめです。
ここでは、母親の着物の柄選びと季節感を意識する際のポイントをお伝えします。
七五三で母親の着物に好まれる定番の柄は、松竹梅、鶴亀、菊、牡丹などの吉祥文様です。松竹梅は一年を通じて着用でき、縁起の良い組み合わせとして人気があります。鶴亀は長寿を願う意味があり、子どもの成長を祝う七五三にぴったりです。菊は秋の花として季節感を出せるほか、上品で控えめな印象を与えるため選ばれています。
季節の花柄と通年柄の違いは、季節感があるか否かです。
たとえば、季節の花柄として桜は春、菊は秋、梅は冬から早春に合わせて着用します。一方、通年柄には松竹梅や鶴亀、流水、雲取りなどがあり、季節を気にせず使用できます。秋に行われることの多い七五三の場合、菊や紅葉などの柄もおすすめですが、通年柄を選べば季節を問わないため、何らかの理由で予定がズレた際でも安心です。
子どもの着物の柄と母親の着物を調和させるコツは「柄は子ども、無地は親」の原則を意識することです。子どもが華やかな大柄の着物を着る場合、母親は無地や地紋程度の控えめな柄を選ぶことで、親子間で調和をさせられます。
また、同じモチーフでも大きさを変えたり、子どもの着物の一部に使われている色を母親の帯や小物に取り入れたりすると、統一感のあるコーディネートが完成します。
大きな花柄が全体に散りばめられたもの、金箔や銀箔が多用された華美なもの、コントラストの強い配色の柄などは、子どもより目立ってしまう可能性があるので避けましょう。 また、動物柄や幾何学模様などのモダンすぎる柄は、神社での参拝には不向きとされているので、神聖な場にふさわしい落ち着いた柄を選ぶと良いです。
写真でも映える柄選びのポイントは以下の通りです。
・遠目でも美しく見える、適度な存在感のある柄を選ぶ ・細かすぎる柄は写真で映りにくい ・大きすぎる柄は派手な印象になりやすい ・流れるような曲線や、全体にバランスよく配置された柄は写真に映える ・地紋入りの生地は光の当たり方で表情が変わり、立体感と上品さを演出できる |
ここでは、七五三の母親着物に合わせる帯と小物について解説します。
袋帯・名古屋帯の違いは格の高さと結び方、長さです。袋帯は準礼装に適した格の高い帯で、約4m20cm~4m30cmの長さがあり、二重太鼓に結ぶことで「慶びが重なる」縁起を担ぎます。一方、名古屋帯は略礼装用で長さは約3m60cm、一重太鼓に結ぶ帯です。名古屋帯でも問題はありませんが、七五三では袋帯を合わせるケースが一般的です。
帯の色や柄は、着物との調和を第一に考えると良いです。例えば、着物が淡い色なら帯は濃い色で締まりを出し、濃い色の着物なら淡い帯で全体のバランスを整えます。帯の柄は、華やかな訪問着には控えめな古典柄を合わせ、シンプルな色無地には桜や梅、扇面などお祝いらしい柄で華やかさをプラスすると、七五三の装いに適したコーディネートになります。
帯締めには組紐の平打ちや丸組、帯揚げには正絹の縮緬など上質な素材を選ぶと、着物の格を簡単に整えられます。色は着物や帯と調和する淡い色を選び、子どもの着物の色と少しリンクさせると統一感を出せます。
草履は着物の格に合わせ、エナメルや佐賀錦など上品な素材を選ぶと良いです。ヒールは3~5cm程度の歩きやすいものにして、台と鼻緒の色を着物に合わせると統一感が出ます。
バッグは、和装用の利休バッグや金襴のフォーマルバッグがおすすめです。草履とバッグをセットで揃えると、まとまりが出て全体のバランスが良くなります。
ヘアスタイルは、上品なアップスタイルが定番の人気ですが、なりたい印象に合わせてアレンジを変えてみると良いです。
例えば、印象別では以下のような髪型がおすすめです。
大人っぽく落ち着いた印象:まとめ髪やシニヨン 可愛らしい印象:ハーフアップやゆる巻きアレンジ ショートヘア:髪の流れを活かした軽やかなスタイル |
髪飾りを選ぶ際は、かんざしや櫛、パールのアクセサリーなど、控えめで上品なものを選ぶことがポイントです。目立ちすぎず、全体のバランスが崩れないので、着物本来の華やかさを引き立てられます。
ここでは、母親が七五三で着物を着る際の注意点について解説します。
神社では参道の真ん中を避け、端を静かに歩かなければいけません。鳥居をくぐる前は服装を整え、軽く会釈をしてから境内に入りましょう。手水舎での清めは右手で柄杓を取り左手を洗い、次に左手で柄杓を持ち右手を洗う順序で行います。
着物での動作はゆっくりと上品に、階段の昇降時は裾を軽く持ち上げ、内股で歩くことを心がけましょう。参拝時は二礼二拍手一礼の作法を守り、賽銭は投げずにそっと入れると良いです。
着物で長時間過ごす場合、締め付けによる圧迫感が生じるので、腰紐の結び目は体の正面を避け、左右どちらかにずらして結んでおくと良いです。帯枕の紐は体に沿わせて結び、前に軽く引っ張って緩めてから帯の中に押し込みましょう。
また、座る際は帯を潰さないよう浅く腰掛けると、形が崩れず長時間綺麗な状態を保てます。
写真撮影時は、以下のポイントを意識することで、着物姿を美しく見せることができます。
・背筋をまっすぐ伸ばして姿勢を正す ・肩を少し下げる ・足はつま先を閉じて内股で立つ ・手は右手で左手の指先4本を包み込むように握る ・指はピンと伸ばしすぎず自然に閉じる ・立ち姿では体重を両足に均等にかける ・座る際は帯を潰さないよう浅く腰掛け、膝を揃える |
親族や祖母との着物格差を調整する際は、子どもを主役に見せることを最優先に考えましょう。祖母が格の高い着物を着る場合、母親は控えめな訪問着や付け下げを選び、祖母がシンプルな色無地なら母親も同程度の格に合わせることで、家族写真でのバランスと統一感を保てます。紋の有無でも格が変わるため、一つ紋より無紋を選ぶなど、格を上げすぎない配慮も大切です。
雨の日は、撥水加工された着物用コートや和装レインコートを用意しておくと良いです。草履カバーで足元を保護し、傘は大きめのものを選んで着物を濡らさないよう注意しましょう。
寒い日の防寒対策としては、着物用の羽織やカイロ、ストッキング等の活用がおすすめです。ただし、重ね着をしすぎるともこもこして美しいシルエットが崩れるため、薄手で暖かい素材を選ぶと良いです。
七五三で母親が着物を着る際、レンタルと購入のどちらにするかは迷うポイントです。ここでは、母親の着物事情について解説します。
着物をレンタルするメリットは、手頃な価格で高品質な着物を選べることです。レンタルであれば、一般的に1~3万円程度で着付けに必要なフルセットを借りられます。
デメリットとしては、体型にぴったり合うサイズが見つかりにくいことや、汚した場合の弁償リスクがあること、何度も利用すると購入より高くなることがあげられます。
着物を着る機会が多い方は、購入したほうがコストを抑えられるため、今後の着用頻度を基準に選ぶと良いです。
着物を購入する場合は、長く愛用できる訪問着がおすすめです。色は淡いピンクやベージュ、水色など飽きのこない上品な色合いにして、古典柄や季節を問わない吉祥文様にすれば幅広いシーンで活用できます。
正絹素材の質の良いものであれば、入学式や卒業式、結婚式でも着用できるので、一生モノの一着として長く大切に着続けられます。
着付けの依頼先は、主に「美容室」「出張着付け」「写真スタジオ」「セルフ着付け」の4つの選択肢があります。それぞれの特徴と目安料金は以下の通りです。
着付けの依頼先 | 特徴 | 目安料金 |
美容室 | 着付けとヘアセットを同時に依頼できる | 約1~2万円 |
出張着付け | 自宅まで来てもらえるため移動不要 | 約8千円~ |
写真スタジオ | 着物レンタルと着付けがセットになっていることが多く便利 | 写真プランに含まれることが多い |
セルフ着付け | 動画を参考に自分で着付ける | 無料(手持ちの場合) |
今回は、母親の着物選びのマナーや色柄の選び方、帯や小物のコーディネートについて解説しました。七五三は子どもの成長を祝う大切な節目の行事となるので、お伝えしたポイントを押さえながら、当日を迎えましょう。
七五三では子どもが主役です。母親の着物は、子どもの晴れ着を引き立てる脇役としての役割を果たすことが大切です。華やかすぎる装いは避け、控えめで上品な着物を選びましょう。格式は子どもより控えめにし、家族間でバランスを取ると全体が調和し写真映えも良くなります。
着物の色選びでは、桃色、薄い黄色、水色、薄緑色などの優しい色合いがおすすめです。帯締め・帯揚げで格を整えたり、シンプルな着物には華やかな帯を合わせたりすると、晴れの日にふさわしい華やかさと品を両立できます。
着物を選ぶ際は、写真映えを考慮し、遠目でも美しく見える適度な存在感のある柄を選びましょう。細かすぎる柄は写真で映りにくく、大きすぎる柄は派手な印象になりがちです。
また、神社で撮影する場所は日本的な古典柄、和室では落ち着いた格調のある柄など、撮影場所に合わせて選ぶと背景と調和します。
七五三に着物を着ることで、子どもの成長を祝うイベントとしての特別感を演出できます。レンタルか購入かは着用頻度や予算に応じて選び、着付けは自分に合った方法を選択すると良いです。
日本の伝統文化を伝える貴重な機会にもなるので、ぴったりの着物を選んで思い出に残る七五三にしましょう。
❖ 関連項目
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