彩・きもの通信

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彩の歳時記 令和4年6月

2022.06.01

紫陽花の八重咲く如く 八つ代に いませわが背子 見つつ思(しの)はぬ

— 橘諸兄 万葉集

紫陽花の花が八重に咲くように、いついつまでも栄えてください。
あなた様を見仰ぎつつお慕いいたします。

 万緑の季節から本格的な夏へ、梅の実が葉から見え隠れする頃、雨の中で生き生きと咲く紫陽花。花の色がよく変わるので「七変化」「八仙花」俳句では四葩(よひら)「葩=花びら」と呼ばれます。日本原産で「花を額縁のように囲う」額紫陽花が西洋に渡り、逆輸入されたものが、今、多くみられる「セイヨウアジサイ」です。

 来春のNHK朝ドラマのモデルの牧野富太郎【1862~1957】は日本の植物学の父と称され、今年、生誕160年を迎えます。長野で姫紫陽花を発見、名付け、自宅の庭〔現・牧野記念庭園}に植えたものは消失していましたがこの機に牧野の故郷・高知の牧野記念植物園から移植し、梅雨の訪れを待っています。紫陽花の名所は多いですが箱根登山鉄道の「あじさい電車」の車窓からの景色はライトアップもされ、夜は幻想的に。

6月の暦

()無月(なつき)の「な」は、【無】ではなく「の」と同じ所有格を表すので「水の月」。

1日 衣更(更衣) 

中国の風習が日本独自の宮廷行事として根付いたもので、その風景を詠んだ歌に
「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」持統天皇【645~690】 百人一首。


2日 横浜港開港記念日

長崎港記念日1859(安政6)年、日米修好通商条約の締結により、下田・函館のほかに港が開港した。横浜市内の市立の学校が休みに。イベントも開催。

6日 芒種(ぼうしゅ)【二十四節気】

(のぎ)(稲でいう籾殻(もみがら)にあるとげ)のある穀物(こくもつ)()(しゅ)(種を蒔く)する時。

6日 お稽古の日 

昔から芸事は6歳の6月6日から始めると上達する、と言われている事に因む。

10日 入梅(にゅうばい)((ざっ)(せつ)) 

芒種から五日目、立春から百三十五日目に当る頃の時期。

19日〔第三日曜日〕父の日

六人の子を一人で育てた父を敬愛する末娘が、「母の日があるなら父の日もと」と牧師協会へ嘆願したのが起源。 


年寄れど 娘は娘 父の春   星野立子【1903 ~1984】

19日 桜桃忌(おうとうき)

十三日に入水自殺した作家・太宰治【1909~1948】の忌日。遺体が発見された19日が誕生日であったのと晩年の作品『桜桃』に因む。東京帝大仏文科中退後、自殺未遂を繰り返しながらも戦中から戦後にかけ精力的に作品を発表。『走れメロス』『津軽』『人間失格』他。

三鷹の禅林寺で桜桃忌。出身地、青森県五所川市金木町では「生誕祭」。代表作「斜陽」に因む「斜陽館」は「太宰治記念館」として見学できる明治後期建造物で国の重要文化財

21日  夏至(げし)【二十四節気】

一年中で最も昼が長く夜が短い日。

思い切り愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花  俵万智

30日 夏越(なごし)(はらえ)

一年の半分が過ぎた日、半年分の穢れを祓い、後の半年の息災を願う神事。茅の輪くぐりは疫病を祓う茅(ちがや)に因み、八文字周りは腰に巻く代わりの動作。


6月の歌 有楽町で逢いましょう(1956年)

詞 佐伯孝夫【1921~1981】
曲 吉田正【1921~1998】 

歌い出しの「あなたを待てば雨が降る」は焼け跡・闇市の名残を残す有楽町駅周辺の若いカップルの姿を彷彿させる歌詞。大阪のデパート「そごう」の東京進出キャンペーン曲。

高級感が欠けた街を米映画『ラスヴェガスで逢いましょう』をヒントに開局四年の日本TVで「有楽町で逢いましょう」という歌番組を提供、番組名はたちまち流行語に。トラック運転手や進駐軍でジャズを歌っていたフランク永井【1932~2008】は一躍スターダムに。

雑誌『平凡』に小説連載、京マチ子・菅原謙二・川口浩、野添ひとみ等で大映が映画化。商業宣伝史上まれに見る大成功を博したが都庁の西新宿移転や経営破綻で2000年に44年の歴史に幕を降ろした。

1.あなたを待てば 雨が降る
濡れて来ぬかと 気にかかる
ああビルのほとりのティールーム
雨もいとしや唄ってる
甘いブルース
あなたとわたしの合言葉
有楽町で逢いましょう

2.こころにしみる 雨の唄
駅のホームも 濡れたろう
ああ小窓にけむる デパートよ
今日の映画(シネマ)は ロードショー
かわすささやき
あなたとわたしの合言葉
有楽町で逢いましょう

3.かなしい宵は 悲しよに
燃えるやさしい 街灯り
ああ命をかけた 恋の花
咲いておくれよ いつまでも
いついつまでも
あなたとわたしの合言葉
有楽町で逢いましょう


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