
大切な着物を長く愛用するために欠かせない着物の虫干し。
着物は長期間収納したままにしていると湿気がこもりやすく、カビや虫食いにつながることがあります。トラブルを防ぎ、良い状態で保管するためには、定期的に風を通して湿気を逃がすことが大切です。
この記事では、着物の虫干しが必要な理由や最適な時期、簡単なお手入れ手順を解説します。マンションや狭い部屋で行う方法などもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
ここでは、着物の虫干しが必要な理由について解説します。
<h3>着物の虫干しとは何をするお手入れなのか</h3>
着物の虫干しとは、着物を収納場所から取り出して風を通し、湿気やにおいを取り除くお手入れです。着物のカビ・虫食い予防のために行い、衣桁や着物用ハンガーに掛けて日陰で干した後、状態を確認して収納します。
<h3>なぜ虫干しが必要?カビ・虫食い・湿気対策になる理由</h3>
虫干しが必要な理由は、湿気・カビ・虫食いから大切な着物を守るためです。着物に使われる絹やウールは湿気を吸いやすく、長期間タンスにしまったままだと繊維に湿気がこもり、生地の傷みやカビの原因になります。
虫干しで着物に風を通すことで、収納中にたまった湿気を逃がし、カビや虫食いの発生を防ぐことができます。大切な着物を長持ちさせるためにも、定期的に虫干しを行いましょう。
ここでは、着物の虫干しに最適な時期・季節について解説します。
着物の虫干しは、7月下旬から8月上旬の土用干し、10月中旬から11月上旬の虫干し、1月下旬から2月上旬の寒干しの年3回が基本です。
それぞれ別の目的があり、土用干しは梅雨明けの湿気を払い、秋の虫干しは夏に発生した虫を取り除き、寒干しは乾いた冬の空気で湿気を抜く目的で行います。3回すべて行うのが理想ですが、難しい場合は年に1~2回でも定期的に続けることが大切です。
春・梅雨・夏・秋・冬で注意したいポイントは以下の通りです。
| 季節 | 特徴 | 注意点 |
| 春 | 気候が安定し、虫干しを行いやすい時期 | 花粉や黄砂が付着するおそれがあるため、多い日は避ける |
| 梅雨 | 湿度が高く、空気中に水分が多い時期 | 虫干しには不向きなため、無理に行わず梅雨明けを待つ |
| 夏 | 気温・湿度ともに高くなりやすい時期 | 台風前後や蒸し暑い日は避け、晴天が続く日を選ぶ |
| 秋 | 空気が乾燥し始め、虫干しに適した時期 | 朝晩の気温差による結露に注意し、乾燥した日中に行う |
| 冬 | 一年で最も湿度が低く、寒干しに適している時期 | 早朝や夕方を避け、気温が安定する時間帯に行う |
湿度の高い日に虫干しを行うと、着物に新たな湿気を含ませてしまい、かえって状態を悪くするおそれがあります。前日に雨が降った日も空気中に湿気が残っているため避けましょう。
虫干しは、湿度40~60%程度で晴天が2~3日ほど続き、空気が乾燥している日に行うことで、繊維の奥までしっかりと湿気を取り除くことができます。
<h3>晴れの日でも注意したい時間帯とは</h3>
晴れの日であっても、朝や夕方は湿度が上がりやすいので、着物が十分に乾燥しない場合があります。また、長時間干したままにすると紫外線による色焼けやホコリによる汚れの原因になるため、14時から15時ごろには取り込み、その日のうちに収納するようにしましょう。
ここでは、着物の虫干しのやり方と手順について解説します。
着物の虫干しを行う際は、以下のアイテムを準備しておきましょう。
| ・着物用ハンガーまたは衣桁(ない場合は肩幅のあるハンガーや布団干し用の竿で代用可) ・新しいたとう紙 ・防虫剤・除湿剤 ・ホコリを払うための和装用ブラシや柔らかい布 ・着物を直接触る際の手袋 |
着物をたとう紙から取り出したら、着物用ハンガーにかけ、裾が床に付かない高さに調整します。掛ける際は、肩や袖のシワを伸ばしながら全体の形を整えましょう。複数枚を干す場合は、着物同士が触れ合わないように間隔を空けて掛けると、風が通りやすくなります。
虫干しは着物だけでなく、帯や長襦袢も一緒に干すと良いです。それぞれを干している間に、カビやシミ、変色、虫食いの跡がないか一枚ずつ確認しましょう。
| アイテム | 確認のポイント |
| 着物 | シミ・黄変・虫食い穴・色あせがないか、衿元や袖口、裾まわりを中心に確認する |
| 帯 | 生地だけでなく芯に湿気がこもりやすいため、表裏ともにカビや変色がないか確認する |
| 長襦袢 | 汗による黄ばみが出やすいため、衿や袖口を中心にシミや変色を確認する |
虫干しは、湿度が低く乾燥した日に、午前10時ごろから3~4時間程度を目安に行うと良いです。長時間干しっぱなしにすると、紫外線による色あせやホコリの付着につながるため、14~15時ごろには取り込みましょう。
着物はハンガーにかけてしばらく室温に慣らし、完全に乾いたら本だたみでたたみます。たたむ際は、着物の折り目に沿わせ、衿や袖など型崩れしやすい部分を整えながら、余計なシワがつかないように注意しましょう。
収納スペースには着物を詰め込みすぎず、少し余裕を持たせると風通しが良くなり型崩れや刺繍のよじれを防げます。また、たとう紙には中身がわかるメモを添えておくと、収納後の管理がしやすくなります。
ここでは、着物の虫干しに適した場所と環境づくりについて解説します。
和室がなくても、リビングなどの洋室で虫干しは行えます。自宅で虫干しを行う際は、直射日光が入らないようカーテンを閉め、窓を二方向開けて空気の流れを作りましょう。
着物ハンガーをかける場所がない場合は、清潔なシーツを敷いた床やベッドの上に広げることで風を通せます。
エアコンを使った虫干しでも、ドライ機能を使えば効果があります。雨の日や湿度の高い時期で屋外の空気を取り込みにくい場合は、着物をハンガーに掛けた状態でドライ機能を2~3時間ほど使用し、室内の湿度を下げましょう。
エアコンを使用する際は、冷風や暖房の熱風を直接当てると生地が傷んでしまうため、必ず吹き出し口から離して掛けることがポイントです。
扇風機やサーキュレーターを活用する場合は、着物ハンガーにかけた状態で弱風を当てると、空気が循環し乾燥が早まります。
風は着物に直接強く当てるのではなく、部屋全体の空気を動かすように調整することが大切です。強い風を当て続けると生地に負担がかかるため、風量は控えめにしながらゆっくり湿気を逃がしましょう。
直射日光に含まれる紫外線は、着物の色あせや変色、生地の劣化を招く原因になります。せっかく虫干しをしても、強い日差しに当ててしまうと着物を傷めるおそれがあるため注意が必要です。
虫干しを行う際は、窓を開けた室内や屋根のある軒下など、風通しが良く日差しの当たらない場所を選びましょう。また、屋外で干す場合は白い布をふんわりとかけておくと、日差しやホコリを防ぎながら風を通せます。
マンションや狭い部屋で虫干しをする際は、ハンガーラックを活用すると着物を広げて掛けやすくなります。窓を開けて風の通り道を作れば、限られたスペースでも虫干しが可能です。
複数枚をまとめて干すのが難しい場合は、一度に無理に干そうとせず、日を分けて数枚ずつ丁寧に虫干しを行うようにしましょう。
ここでは、虫干し中にチェックしたい着物のトラブルサインについて解説します。
虫干しで広げた際にカビや黄ばみ、シミを見つけたら、自分でこすったり叩いたりせず専門のクリーニング店に相談しましょう。
カビは繊維の表面だけの白カビと、内部まで根を張った黒カビ・緑カビがあり、状態によっては除去が難しいケースもあります。黄ばみやシミも時間が経つほど落としにくくなるため、見つけたら早めに対応することが大切です。
着物に多く使われる絹やウールなどの動物性繊維は、ヒメマルカツオブシムシなどの衣類害虫が好む素材です。また、湿気がこもったタンスの中は、虫にとって過ごしやすい環境になりやすく、気づかないうちに繊維が食べられて穴が開いてしまうことがあります。
虫干しで小さな穴や虫のフンのようなものを見つけた場合は、ほかの着物にも被害が及んでいる可能性があるため、同じ引き出しに保管していた着物もあわせて確認しましょう。
たとう紙は湿気を吸い続けることで吸湿力が徐々に落ち、表面に茶色い変色や斑点状のシミ、カビなどが現れてきます。紙にハリがなくなり、しんなりとした湿った感触になっている場合も劣化のサインです。
劣化したたとう紙を使い続けると、汚れや湿気が着物に移ってしまうことがあります。交換時期は1~2年が目安とされていますが、保管環境によって劣化度合いが変わるので、変色やシミ、湿り気が見られたタイミングで新しいものに交換するようにしましょう。
着物を虫干しできない時の代替方法と湿気対策
ここでは、着物を虫干しできない時の代替方法と湿気対策について解説します。
忙しくて虫干しできない場合の簡単なお手入れ</h3>
虫干しの時間を確保できない場合は、晴れた日にタンスの引き出しを開けて扇風機で風を送るだけでも、ある程度の湿気対策が行えます。
また、着物を広げて湿気を取ってから畳み直し、その状態で引き出しを開けて風を通す方法もあります。定期的に風を通すことで湿気がこもりにくくなるので、できる範囲でお手入れを行うことが大切です。
防虫剤は着物に直接触れないように、タンスの隅やたとう紙の外側に置きましょう。また、防虫剤を複数併用すると化学反応を起こし、シミや変色の原因になる可能性があるため、必ず一種類のみを使用することが大切です。
除湿剤は、シートタイプであれば着物の上に直接置けるものもありますが、湿気を吸って水分が溜まったまま放置するとカビの原因になることがあります。たまった水分はこぼれないよう注意しながら、定期的に状態を確認し、製品の指示に従って早めに交換しましょう。
収納ケースは湿気がこもりやすいため、除湿シートを敷き、着物を詰め込みすぎないように気を付けましょう。桐タンスは湿度を調整する効果がありますが、入れっぱなしにすると湿気でカビや変色が起こる可能性があるので、空気が乾燥した日には引き出しを開けて風を通すことが大切です。
日中に時間が取れない場合は、晴れた日の夜に着物ハンガーへかけ、扇風機で一時間ほど風を当てるだけでも湿気対策として効果があります。
陰干しは着用後の汗や湿気を逃がすためのお手入れなので、夜の短時間でも十分です。一方、虫干しは着物全体に風を通すためのお手入れのため、時間がないときは夜に風を通し、余裕があるときに改めて日中に虫干しを行うようにしましょう。
着物を長持ちさせるには、収納場所に着物を詰め込みすぎず、引き出しに少し余裕を持たせることで湿気がこもりにくくなります。
また、日頃のお手入れとして着用後はすぐにしまうのではなく陰干しを行い、定期的にたとう紙や防虫剤の状態も確認しておくと良いです。
着物の虫干しは、湿気によるカビや虫食いを防ぐための欠かせないお手入れです。
虫干しの際は、着物だけでなく帯や長襦袢も一緒に確認し、カビやシミ、虫食いなどのトラブルがないかチェックしましょう。和室がない場合やまとまった時間が取れない場合でも、エアコンや扇風機を使った室内での虫干しや、夜間の虫干しなどで代用することができます。
虫干しは、ポイントを押さえれば自宅でも簡単にできるので、長く愛用するための習慣として取り入れてみてください。法を取り入れながら夏の暑い日の着物を楽しんでみてください。
❖彩きもの学院では新規生徒募集を行っております。
詳しくは下記リンク先まで!
❖ 関連項目
・-トップページに戻る―・